高齢社会、医療費削減、採用難など、医科・⻭科のクリニックの経営環境は厳しさを増しています。そうした中「経営アシスタントとしての事務⻑活用」に関心が集まっていますが、「事務⻑採用」には失敗ケースが実に多いと言われています。 これからのクリニック経営の勘所ともいえる、事務⻑採用の注意点や成功するためのポイントについて考えていきましょう。
「事務⻑活用」の代表的な失敗やトラブルのケースとは?
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労働組合の代表者のような存在になってしまう
組織が大きくなると、スタッフとのコミュニケーションの一部を事務⻑に委譲していくことになります。立場上、シフトや給料など雇用条件に関わる領域でスタッフと接する事務⻑のもとには、愚痴、不満、要望が数多く寄せられることになりますが、この時、経営視点や管理職経験のない事務⻑の場合は、スタッフの声に徐々に洗脳され、「院⻑が悪い」という考えに陥ることがあります。 そこからスタッフの代表として、様々な交渉をしてくるという構図ができあがります。
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お金の使い込み、横領
一定の勤務年数が経過し、クレジットカード情報、通帳や印鑑を預けた後に起きてくる問題です。
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女性スタッフから総スカン
特に、企業から転職してきた男性事務⻑の場合、前職場でのコミュニケーション方法をそのまま持ち込み、不評を買うケースがあります。 小さな規模である⻭科医院の場合には、企業論理や組織論理について学んだことのないスタッフが多いことと、事務部門の役割が理解できないことの二つの理由から、単なる上司から部下への指示命令では協力関係を構築できないことがあり、院⻑にとって新たな悩みの種になることがあります。
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スタッフとの異性関係のトラブル
社会的に認められる恋愛関係を超え、職場に迷惑をかける異性関係のトラブルも後を絶ちません。 この男女関係における倫理観は仕事能力とは関係なく、優秀なスキルを持った事務⻑でも問題を起こすことがあります。
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口が軽い、機密情報を管理できない
昇給や賞与の査定、経営状況、人事情報など、院内のマネジメントには機密情報を取り扱うことが含まれます。こうした、いわゆる「他言無用」の情報をついついスタッフに漏らしてしまう事務⻑が、組織内に不必要なトラブルを起こすケースがあります。 特に、企業経験が少なく、組織仕事のルールや処世術について学んだことがない事務⻑に見受けられます。
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仕事能力が低く、期待していた仕事を頼めない
「仕事ができない人を採用してしまった。」 これが結局は一番多いケースと言えるでしょう。 電池の購入を指示したら、あらゆる種類の電池を買ってきた、という笑い話のようなケースから、いつもパソコンでゲームばかりしている。頼んだ仕事がいつまで経っても完了しない。など、事務⻑に対する期待外れは枚挙にいとまがありません。
このように、事務⻑活用で楽になるどころか、心労が増えてしまうという話を、多くの院⻑も一度ならず耳にしたことがあるのではないでしょうか。(コラムの続きは順次更新していきます)